「足技はあるけど当たりに弱いサッカー少年」に足りないスキル
「足技でかわしても、足が遅いのですぐ追いつかれてボールを奪われてしまう。」
「体が小さいので力負けしてしまうことが多い。」
このような悩みを抱えているサッカー少年は多いのではないでしょうか。
ボールタッチやドリブル練習で足元のスキルを鍛えても、サッカーの試合ではどうしても対応しきれないシチュエーションがあります。
実際に少年サッカーの試合では、テクニックの優れた選手をフィジカルの強い選手が圧倒してしまうシーンを見ることは多いのではないでしょうか。
ところが、メッシやイニエスタ、テベスなどは決して体が大きいとは言えませんが、体が大きな選手とも互角以上に渡り合っています。
いえ、むしろ「球際が強い選手」という印象すらあるのではないでしょうか。
彼らの足技が一流であることに疑う余地はありませんが、それだけではないということですね。
では、日本に多い「足技はあるけど当たりに弱いサッカー少年」との違いはどこにあるのでしょうか。
その答えが本書「サッカー南米流球際が強くなるスキル」にあります。
日本人が苦手なコンタクトプレー
私は以前ラグビーをやっていましたが、サッカー以上に激しいコンタクトプレーのスポーツでありながら、その頃から「日本人はコンタクトプレーが苦手なんじゃないか?」と思っていました。
日本在住の外国人で構成されたチームや米軍基地のチームと試合をしたこともあったのですが、タックルの質があきらかに違うんですね。
ひとことで言うと彼らのタックルは「痛い」んです。
もちろん人種による骨格の違いなどもあるんでしょうが、それだけじゃないんです。
彼らはタックルに行く時に一切の躊躇なく100%の力でぶつかってくるんですね。
いや、もちろん私も含めて日本人のラグビープレーヤーも100%のつもりで行くんですが、
「できればコンタクトプレーは避けたいけど、ここはタックルに行かなきゃいけない場面だから、頑張って全力で止めよう」
といった感覚があって、どこか無意識のうちにブレーキがかかっているような気がします。
実際の試合で外国人プレーヤーとぶつかりあって、はじめてこのことに気づいたのですが、この感覚は彼らからは一切感じられなかったんですね。
私が思うに、日本人がコンタクトプレーを苦手とする理由はこんなところじゃないかと思います。
- 争いを未然に避けようとする国民性
- 他人とのボディコンタクトに抵抗を感じる恥ずかしがり屋の性格
- ルールのグレーゾーンに踏み込もうとしない遵法意識の高さ
これらの特徴は日常生活では長所となっても、ことサッカーやラグビーのフィールド上ではマイナスに作用しているように思えます。
たとえば、アルゼンチンやスペインのサッカー選手の体格は日本人と大差ないですが、コンタクトプレーの強さや上手さには大きな違いがあります。
「ドリブルが得意な日本のサッカー少年がスペインに行くと何もできなくなってしまう。」
「足技では日本のサッカー少年の方が優れているが、体の使い方はアルゼンチンの方が上手い。」
こんな話はよく聞きますが、あながち的外れではないのでしょう。
また、以前、松井大輔選手がフランスサッカーに触れた時の印象をテレビで語っていましたが、
「日本のサッカーとはまるで別物。ラグビーかと思った。」
と言うほど、激しい体のぶつけあいに驚いていましたね。
このようにコンタクトプレーを苦手とする意識からか、日本では球際のスキルの研究が遅れているように思えます。
実際に、息子のサッカーを通じて多くの指導者と知り合う機会がありましたが、足元の技術に比べると球際の体の使い方などに関しては、あまり指導を受ける機会はありませんでした。
もっとも「コーチのプレーを見て盗め」式の指導はありましたが・・・。
教えられたことは「ボールを奪う際には、相手とボールの間に体を入れる」といった基本的なことぐらいで、様々なシチュエーションにおける手の使い方などは、詳しく指導されていないはずです。
小学生年代だからこそ激しいコンタクトプレーをやるべき
「球際の激しさ」が日本と海外のサッカー強豪国との大きな違いのひとつですが、この傾向はすでにジュニア世代から現れています。
プレイがとても激しいのが印象的でした。
前日に行われたプレマッチの時に、バルサの選手が激しいタックルにあい骨折、大会当日は松葉杖をついての見学となる様子を目撃しました。
本大会中にも、怪我をした子どもの為に救急車が来るのを見ました。
これもどちらが良いのかわかりませんが、こちらの大人たちの反応は、至って平静。
サッカーはそんなものだよ、というような感じを受けました。
引用元:おれ、バルサに入る!
激しいコンタクトプレーは小学生年代は避けるべきという意見もあるかもしれませんが、私は逆にできるだけ早いうちにやるべきだと思っています。
思春期を迎え、身体が急激に発育するジュニアユース(中学生年代)になると、ジュニア時代とは比べ物にならないくらいコンタクトプレーも激しくなります。
ところが、力が強くなったにも関わらず、まだヨロイとなる筋肉は少なく、大人ほどの体の強さを伴っていないので、骨折などの大きな怪我が多くなるのもこの年代の特徴です。
しかし、小学生年代ではまだ力も弱く体も柔らかいので、激しくぶつかり合っても比較的大きな怪我にはなりにくいです。(あくまでも他の年代と比較すればという意味です)
コンタクトプレーで怪我をしないためには、体の柔軟性や筋肉量も大事ですが、激しい体のぶつかり合いに慣れているかどうかも重要です。
そのような観点からも、ジュニア年代のうちに、本書のような球際のスキルを使ったコンタクトプレーに慣れておいた方が、激しいぶつかり合いの中での身のこなし方が体感で分かっているので、その後の年代でも怪我をしにくくなるでしょう。
※参考:おれ、バルサに入る!【レビュー】
クーバーのボールマスタリーと組み合わせれば最強!
「クーバー・コーチングの評判と実感」でも触れましたが、私の息子がクーバー・コーチング・サッカースクールを辞めたのも、この球際のスキルに対する、当時の担当コーチとの考え方の違いが原因でした。
おそらくですが、クーバーでは球際における手の使い方や体の当て方を、あまり重視していないように思います。
でも、試合の中ではとても重要な技術なんですよね。とりわけ1vs1の局面における勝敗に、この「球際のスキル」は大きく影響します。
もし、お子さんがクーバーでは活躍しているのに、所属チームの試合では同じようにプレーできないというお悩みをお持ちであれば、この「球際のスキル」の欠如に原因があるかもしれません。
「サッカー南米流球際が強くなるスキル」では、日本人が苦手なコンタクトプレーのテクニックを様々なシチュエーションに応じて詳しく解説しています。
また、世界基準では、どこまでがセーフでどこからがファールになってしまうのかも、写真付きで掲載されていますので、子供が読んでも分かりやすいはずです。
大ざっぱな言い方をすれば、
クーバーの「ボールマスタリー34」が「上手さ」を身につけられるなら、
「サッカー南米流球際が強くなるスキル」は「強さ」を身につけるのに役立つと言えるでしょう。
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ちょっと残念な点
このように、本書は「球際の強さ」を身につけるにはベストのサッカー本と言えますが、ちょっと残念な点が二つあります。
うーん、やっぱり動画の方が分かりやすいんですよね。
サッカーに限らず、これからのスポーツの解説本には付属DVDは必須だと思います。
もちろん、本書は写真付きの細かな解説で分かりやすいのですが、子供が直接見て理解するには動画の方がより直感的に理解しやすいと思います。
これは、本書に問題があるわけでははありませんが・・・。
せっかくこのスキルをマスターしても、日本の試合ではファールを取られる可能性があります。
で、おそらくファールを取られるうちに使うことをセーブするようになってしまい、結局身につかないかもしれませんね。
本書では「世界基準ではこれならファールを取られない」というテクニックが解説されていますが、残念ながら日本で同じことをやるとファールを取られる可能性があります。
こればかりは日本のレフェリングレベル向上を祈るしかないでしょうね。
「城彰二 サッカー上達DVD」とは異なる点
「サッカー南米流球際が強くなるスキル」では、パスを受ける際に、予備動作でDFの体を押さえ、動きを止めてからボールを受けるスキルが紹介されています。
これは小柄な日本人が身につけると非常に有効なスキルですが、実は「城彰二 サッカー上達DVD」でも、同じようなシチュエーションのスキルが解説されているんですね。
ところが、両者ではDFの体のどこを押さえるかが異なります。
具体的にはここでは触れませんが、自分よりかなり大きなDFを相手にした場合、「南米流スキル」のやり方では、力で押し切られてしまう可能性があります。
もちろん、どちらでもやらないよりはやった方がよいのですが、おそらく「城彰二 サッカー上達DVD」で紹介されている押さえ方の方がより効果的です。
思うに「サッカー南米流球際が強くなるスキル」が南米では広く知られているスキルなのでしょうが、「城彰二 サッカー上達DVD」はサッカー界では非常識な裏ワザということなのでしょう。
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